2023年度
ディープテック起業実践演習(院生向け・Aセメスター)
講義全体
- 自身の研究内容がいかに医療の前進に貢献できるか、基礎研究成果を社会実装し、いかに患者の手元に届くものとするか、といった点を学びたいと考え受講を開始した講義であったが、さまざまな方々のお話を伺い、メンバーとの積極的なディスカッションを通じて、本当に学びの多い時間でした。これは、今後自身が新たな視点を持って基礎研究を続けることやその先のキャリアデザインに大きく生きてくる経験になると確信している。
- 最終的に受講動機であった「自分の研究と社会課題をつなげるアイデアの創出」を想定以上のクオリティで実現できた。1講義に参加しただけで、ここまで意義深い経験が(3ヶ月弱で!)できたことは大変喜ばしい。将来もこの神講義から、個性豊かな事業案が創られていくことを願っている。
- 一貫してどんな顧客の課題を開発するのか、課題解決によって顧客にもたらされるメリット、経済的ゲインはいくらであるのか、といった視点の重要性を身にしみて感じました。本講義を通じて学んだ以上の知見は、基礎研究活動にしか取り組んだことがなかった自分にとってはどれも目から鱗であり、自身の大きな成長へとつながったと感じています。
- ディープテックはマネタイズまでに時間がかかるものの、テクノロジーリスクが高いので市場リスクの低いゲームになると思っていた。しかし発表に対するFBを聞いているうちに、事業者側の独りよがりでは無く、顧客にとってその事業が存在しなければいけない理由を明確に話せないといけないことを痛感しました。
- この授業で得られたものの中で最も大きかったのは、一つは、自分の気持ちの整理と起業への決心でした。授業が始まった当初は、「自分の研究と社会とのつながりを考えられたらな」程度の気持ちだったものが、3ヶ月を通じて様々なFW、チームメンバーとの議論を経たことで、「実際に自分が人生をかけてこの事業に取り組みたい」と思えるようにまでなりました。
- 授業から得られたことは、挑戦と成長の機会であったという点です。起業家精神を育むことや、革新的な技術を理解することは容易ではありませんが、その過程で得られる知識と洞察は非常に貴重だと感じました。また、自分の限界に挑戦し、より深くフェムテックの分野に踏み込むことで成長する喜びも感じました。おかげで、これからしたいと思っているフェムテックの起業についてより具体的なビジョンが見えました。
- このディープテック起業演習の授業は、まさに私たちが科学技術の最前線とビジネスに触れる絶好の機会でした。事業案のピッチとそのフィードバックは、私たちが自らのアイデアを如何に効果的に伝え、それを実現するための戦略をどのように練るかという点で、非常に貴重な経験となりました。
- 誰に何をどうやって売るのかを常に意識することの重要性を知り、またそれがとても難しいと実感しました。さらに自分がいいと思う事業案でもフィードバックをもらうことで、全然見えていなかった問題点や方向性を見つけることができ、可能であればもっと早い段階からフィードバックをもらうべきだったと感じました。
フィールドワーク(FW)・仲間との出会い
- この講義ではFWに対する支援もあり、FW先との交渉の際に非常にスムーズに進めることができた。おかげで、Shojinmeat(インテグリカルチャー)、メモアカ、エモーションテック、Xcoo、東大IPC、JETROなどたくさんの方々方フィードバックをもらうことができました。また、将来は研究シーズを使って起業したいと考えて受講しましたが、目的通り、これらの活動を通じて、研究を事業化する際に必要なステップの理解を深めることができました。
- 得られた大きなものとしては、チームメンバーとの出会いがありました。“起業に向けて熱意ある方々と知り合い”、“お互いに刺激し合い”、“高め合える”、最高な環境を与えていただいたことに、とても感謝しております。
- チームメンバーで多数の議論とFWを行い、その過程でピボットも5回以上行いました。未だ、最終的な具体的アイデアに辿り着けてはいませんが、現在もメンバーで協力して模索を続けているところです。今後は実際に起業をするつもりで動いていく予定です。
- アントレプレナーシップの教育やコミュニティは、仲間を見つけるという観点で重要であると考えています。個人としての能力は自ら研鑽するべきであり、他の優秀な方の経験や知見を吸収するのは当然のこととして、仲間を見つけることは教育やコミュニティの中で達成されることが多く、一人では決して達成することができないことです。最後に松尾先生がアントレプレナーシップの教育に意義はあるのかと問題提起されていましたが、正直なところ、事業案を見つけるという点では直接的に関わることは難しいと考えています。ただ、良いアイデアを思いつけるかは個人に依存するとしても、それを達成できるように押し上げるメンバーをすぐに探しに行ける環境はとても貴重です。
- 毎週の授業アンケートで、フィールドワークの有無を書く欄があり、それに背中を押され実際にお願いしてみたところ、快く引き受けていただけた。この授業がなければ、訪問をお願いすることもなく、相手にも引き受けてくださらなかったと感じていました。訪問すると、インターネットや書籍で勉強するよりもはるかに、理解が深まったのを感じました。
ネクストステップ
- 今すぐなにかが起こるわけではなくても、長期視点で貴重な関係性を得られた。一方でコミットなしに学生という身分に甘んじるような形では、起業で成功することはないとも実感しました。総じてテクノロジーによるビジョンを磨き続けることがあらゆる点で重要であると感じる機会でした。
- 研究の進捗状況の点で講義後すぐに起業をするつもりはなかったのですが、本講義を通じて、これは正しくむしろバイオテックにおいては起業前のカンパニークリエイションが非常に大事だと理解することができたため、今の段階からしっかりと準備をしていこうと思います。準備のための全体像の把握も講義を通じてかなり達成できたと感じております。
- 研究を志すると研究活動そのもののビジネスモデルが必要で、どこかのタイミングで事業化していく出口戦略が必要だと常々思っており、事業そのものを学ぶために参加しましたが、事業の基礎のところから、学びが多かったです。事業開発こそが事業の中心であり、技術は一つの側面でしかないことがわかって、研究で生まれたシーズを市場に合わせて事業開発する会社組織が必要であるということを理解できました。一方で、自分は研究のシーズをそのまま事業化することにこだわってしまい、強度が高い課題に訴求することができなかった。研究を中心にやっていると現場感がないので、現場に赴くことや現場の課題が上がってきた時にアクセスされるような対外的なブランド形成が重要であると感じました。ビジネス全般については、そのような授業を受けること自体が初めてだったが、何も知らないところから入れてとても学びになりました。特に、誰に何をいくらで売るかでビジネスモデルが確定すること、性能が良くなったからといって、相手のビジネスを改善できなければ導入されることはなく、サンクコストの方が高いことが十分あり得ること、課題の強度がなければそもそもスタートアップとしてやる意味があまりないことは今後の生活の中で意識していくことになると思いました。
来期以降の受講生に向けたアドバイス
- ディープテック起業をしたいという漠然とした思いを持っている方はぜひ受講してほしいと思います。解像度がより高まり、自身のキャリアに対しても考えるきっかけとなります。
- この講座は主に院生向けですが、研究を始めたての学部3、4年生が受講することには大きな意義があると感じます。
- 一人では行動しにくい人は、積極的にチームを組むといいと思います。お互いに励まし合う仲間がいればスピードが加速します。
- この講義を受講している方は同じような思いを持っている方ばかりで成長し合える環境にあると思います。
- ネットで調べて分かった気にならず、現地の声を集めまくることが事業案を磨く近道だと思います。産業課題はニュース記事で言われているほど単純でないことが多いです。
- 対面で受講することをお勧めします。また、運営の方や講師の方と話をすると、人生の原動力となる言葉をいただけることがあります。
- 運営の方々が優しいので沢山相談するべきだと思います。
- 授業後の懇親会などで話が進むことがあるので、そのような機会があれば積極的に参加することをお勧めします。
- 受講する価値として、起業の基礎的知識やノウハウを学ぶこともあると思いますが、一番の魅力は優秀なメンバーと仲間になる機会であることだと思います。私は、あまりできませんでしたが、slackでの積極的な発信や懇親会の参加など、外部と接触する機会を増やすことが価値になると思います。
- 最初、チーミングで戸惑うこともあるかもしれませんが、自分の強みを把握して、それを求めている人に積極的にアタックするのがおすすめです。とりあえず懇親会に参加しまくりましょう。自分から動けば動くほど旨みがある講義です。
- 完全にキャパオーバーするまでは、できることは全部した方が良いと思います。
- ここで大局観を掴んだ上で研究に没頭し、数年間の修行(引き続きコミュニティと接点を持ちつつ、自分の武器を磨いていく)を経て仮説や論点が明確で勝ち筋が見えた状態で会社を興せたらすごく成功確率が高まるように思っているので、研究を始めてから早めにこの授業を受講するのはすごくいい選択肢であると考えています。
- とにかく仮説検証を回すことが一番だと思っています。なるべく早い段階で仮説を設定して、必要なヒアリングを行い、仮説を高速にアップデートしていくことが非常に大事だと思います。
- ILS(Innovation Leader Summit)に行った際に、バイオの解像度が上がっており、有益なディスカッションができました。また、バイオの発表ブースにいたAIベンチャー(自分の専門)とも知り合うことができ、セレンディピティというより、見聞が広がることで世界が広がるのを実感できました。また、バイオ×AIは一般的な産業における社会実装とは違い、バイオ系のビジネスも風変わりな戦略で成功している企業がいくつもあり、Bizの人、AIの人こそ真面目に取り組めば、それだけ得られるものが大きいと思います。各論では、創薬(化合物)やそれ以外の研究に関する特許戦略は実践を踏まえて知ることができて良かったのと、はじめからグローバルを見るというのは視座が高くなるし世界の最新のトレンドがわかるので勉強になりました。
- まず、すぐに起業するのではなくても、いずれ起業するという意識の下、毎回の講義を現地で聞くことをおすすめします。事情によってオンラインでしか受けられない場合を除き、少しでも多くの時間を生の声を聞くことや現場の空気感・温度感を肌で感じる時間にする方が得られるものが多いと感じました。特に、登壇者に来られる方はどなたもご自身のお仕事に関してはもちろん、日本のエコシステムへの向き合い方や起業に関しての深い造詣と熱意を持っておられるため、学びになることは多いと思います。加えて、他の参加者で他分野の方の事業案やそれに対するFBを聞くことも新しい知見や視点を得ることに繋がるため、楽しみながら受講できます。それとは別に、学部または大学院の最終学年の場合、卒業論文または修士論文を書くことが優先されるため、講義に100%向き合えないことがあります。私も実際毎週追い詰められていましたが、講義での学びの多さや、チームメンバーとの交流を支えに何とか最終回まで出席出来ました。来期以降受ける方で、私と同じような条件でもご自身のスケジュールと上手く相談しながら積極的に受講して欲しいと考えます。